京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
即答に彼女の仮面が剥がれた。
歪に歪む顔は傷ついた心の表れだろうか。
いつも穏やかな笑みを心掛け、何故そう思ったのか朔埜が好きだと思った頭の弱そうな女を装って。
それで苦悩を綺麗に隠していた事を知っていた。
自分の弱音一つで変わる関係性を懸念して。
……そんなところも自分と良く似てるけれど。
それを慰る心は湧いてきても、愛しいとは思えない。
きっとそれも、お互いそうなのだろう。
「……すまん」
断れば立場が悪くなるのは乃々夏の方。
そうと知っていても。
譲れないから。
「いいわ、無理だもの……分かるわ……」
そう言って乃々夏は無理に笑ってみせた。
「それにあたしだってもう、警部補なのよ? 順調にキャリアを積んでいる。あなたがいないと生きていけないなんて言わないわ」
「……お前は優秀やったもんな。ずっと勿体無いと思ってた」
「それを言ったら史織さんはどうなのかしら? 自立志向を持ってるみたいだから傷つくかもよ?」
「お前と史織は違うやろ」
「そうね……」