京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
その言葉に少しだけ、乃々夏は哀愁を思わせる笑みを溢した。
ふと息を吐けば、乃々夏の手がするりと上がるのが見えた。それに合わせて自分も手を伸ばす。
最後まで笑顔の仮面を貼り付ける彼女。
けれど、その手は朔埜の手を通り抜け頬を張った。
乾いた音が空気を震わせ、朔埜はツンと痛む頬に手を添えた。
「決めるのが遅いのよ、馬鹿」
ぽかんと呆ける朔埜に背を向け、乃々夏は後手を振る。
「じゃあこれで、バイバイ」