京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「乃々夏さん」
 辻口は膝をついて乃々夏の手を掬い上げた。
 突然の事に驚いてしまう。
「俺があなたを迎えに行きます」
「お前……何を言ってるの」

 真っ直ぐな眼差しに乃々夏は怯んだ。
「狡いのは分かっています。若旦那様があなたを放した今、捕まえようとしているのですから。ですが……」
 口ごもる辻口に乃々夏は察してしまう。
 辻口が本気で乃々夏を迎えに来たとして、攫うくらいしか思い浮かばない。
「それはきっと、上手く行かなかったでしょうね」
 乃々夏もまた、朔埜のように家に囚われているのだから。本気で決別する事は出来ない。

 ……でも
「あなたをお守りする誓いは、今も変わりません。東郷家からも、例え四ノ宮家だろうと必ずあなたを幸せにします。だから、私を、選んでください」
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