京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
あれから──
紅葉が盛んな秋から三ヵ月以上が経った。
京都での生活は目まぐるしい。
花嫁修行というよりは旅館業の勉強に近いような日々だけど、とても充実していた。
そしてこの話を決めた時、仕事は退職した。
休職という言葉が頭を過ったが。戻るつもりは無かった。
それを意を決して上司に話に行った時、寿退社だと伝えたら喜んでくれた事が意外だった。
辞めざるを得ない状況を惜しんでくれたのも嬉しく思った。引き継ぎをしながら、自分は京都でやっていけるのか不安で仕方が無かったくらいだ。
「それで朔埜さんて、どんな人? 明後日の新年会に顔を出すんだろ? うちの祖父さんが反応するなんて珍しいからさ。俺も楽しみ」
「……」
朔埜とは一週間前に先に入籍を済ませてしまった。
だから直樹が義兄と呼ぶのもおかしくないし、夫を紹介するのも当然だ。
入籍ついでに四ノ宮家の事情は聞いた。
けれど家名より、史織には朔埜の方が大事で大好きなのだ。
だから頬が緩むのは止められない。
「どうって……」