京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
三ヵ月前……
京都、四ノ宮家で開催されたパーティーに史織は急遽朔埜のパートナーとして立席する事となった。
一応千田家の令嬢の端くれ。最低限のマナーは身につけてはいるが、家ではいつも会場の端で壇上を見上げるだけだったものだから、こうして人前に立つのは恐ろしく緊張する……
しかも和装なんて成人式以来で、着崩れが怖くて仕方ない。そんな隙を見せれば三芳の叱責が飛んでくるだろう事は明白で、史織は必死に笑顔を貼り付けていた。
「……史織さん」
振り返れば良家の令息然とした昂良が、いつもの笑顔で立っていた。
身構える史織の肩を抱き、朔埜が笑顔で牽制する。
「ようこそ、こんな遠くの会場をわざわざ選んで貰って嬉しいわ」
「謙遜しないで下さい兄さん。別にこの旅館が交通の便が悪い上に古臭いなんて事はありませんから。ほら、参加客も珍しそうな顔をしているでしょう?」
「……ああ?」
びきりと朔埜の笑顔にヒビが入る。