京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「ああ、嫌だ。ちょっと挑発すればすぐ本性を表して。史織さんも兄さんに愛想が尽きたらすぐに僕に相談してくださいね。あくせく働く必要も、有閑に押し潰される事も無くしてあげますから」
 そういうと昂良はすかさず手の甲に唇を触れさせ、朔埜の怒りが届く前にひらりと躱す。

「振られた奴は引っ込んでろ!」
「振られてませんもん、縁が無かっただけです」
「一緒や!」

 ぎゃいぎゃいと騒ぎ出す二人に、けれど不穏なものは感じない。それはきっと昂良の雰囲気が変わったからのように感じる。
 貼り付けた笑顔から垣間見える素の表情からは、憑き物が落ちたような、何かを吹っ切れたような顔をしていた。
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