京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「落とし物が見つかったのですか?」
思わず口にすれば昂良は一瞬驚いた顔をしてから、気まずそうに笑ってみせた。
……朔埜も時々見せる、隙のある表情。
「いえ、それはまだ……だけど、もう少し頑張ってみようかなあと思ってね」
あの後、昂良が旅館に来るという噂が聞こえて来たけれど。結局は立ち消えになったらしい。……本人の意思なら間違いは無いと思う。
今の昂良からは、悩んで間違えても、今度はやり直してでも行きたい道が見えているような、そんな真っ直ぐな決意が感じられたから。史織もほっと息を吐いた。
「誰かを求める前に、自分がなりたい者になるのが先ですよね。結局はそれが、選んで貰える秘訣となる訳ですから」
「そうですかね……?」
ふふと忍び笑いをする昂良に再び緊張感が込み上げる。すると朔埜の不機嫌な声が落ちてきた。
「おい、もういいやろ。学生は黙って勉強だけしてりゃええんや。未練がましい真似は止めや」
「はいはい、分かったよ。じゃ、またね。史織さん」
「あ、はい……失礼します」