京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
(どうしようどうしよう)
逃げたくても靴の底が抜けていて走れない。
男性たちはたった二人から、まるで山のような威圧感を感じる。周囲の人たちは通りすがりにこちらを一瞥するだけで素通りしていってしまう。
(怖いよう)
一人旅なんて計画しなければ良かった。
人に道を尋ねるどころか、お店で商品の場所を聞く事すら躊躇うくらい人見知りなのに……
内気な性格を少しでも改善したくて思い切った一人旅。こんな形で失敗してしまうなんて思いもしなかった。
おろおろと一人泣きそうになっていると、再び英語で別の誰かが話しかけてきた。
「May I help you?」
そう言って誰かが史織の前に立ち、背中で向かいの男性たちかが見えなくなる。それに少しだけホッとしていると、史織を他所に三人が英語で何やら話し出しす。
何を言っているのか分からないまま、これからどうしようと途方に暮れていると背中を向けていた人物ががこちらを振り向いた。
「……」
「……っあ、の」
けれど彼はむすりと口元を引き結んだまま、じろりと史織を一瞥する。そこには迷惑の二文字がきっちりと顔に書いてあり、思わず閉口してしまう。
十代と思われる少年、のようだが、中性的な顔立ちで、一瞬女性に見えてしまった。
身体付きは細いし、背も史織より少し高いだけだ。
更木脱色した髪が幼い印象を与え、歳は史織より下に見える。そのせいか威圧感は感じられない。