京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
──住み込みでお見合いなんて聞いた事が無い。
母親の設定がおかしすぎる。取り敢えず母はこれで直樹を誤魔化すつもりらしいけれど……
「えーと、あの」
「姉ちゃんがお見合いなんて変なの〜とか思ったけどさ、有名旅館の肩書きに釣られたんだろ? 母ちゃんに上手い事やられたよな〜」
うん、当たらずとも遠からずってこの事だ。
「まあ、ね……」
史織はぎこちなく頷いた。
「何にせよ、お土産買って来てくれれば俺は何でもいいや。生の八つ橋なー。チョコ味も入ってる詰め合わせにして」
「はいはい」
(京都か……)
そういえば久しぶりだ。
凛嶺旅館は京の地にある。
この四年で何となく足を背けていた場所。
(何もない、ある筈が無いのに……)
『あんたみたいにすぐ泣く女は嫌いやねん』
不思議と史織の胸は高鳴っていた。