京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
2. 四ノ宮 朔埜
「──何で見合いなんてしなきゃならんのや」
「いい機会やろ。じいに感謝せえ」
素気ない物言いに朔埜は祖父──四ノ宮 水葉を睨みつけた。
囲炉裏を火かき棒で掻き混ぜ、水葉は朔埜に向き直った。
きちんと正座をしているこちらに対し、祖父は胡座だ。それがお互いの立ち位置が分かる図式でもある。
朔埜には十八歳の時から家が決めた、二歳年上の婚約者があった。
けれど朔埜が大学卒業と同時にと約束していた結婚が、纏まらなかったのだ。
彼女は二十五歳。このご時世では遅くは無いが、良家の令嬢としてはそう言われる年頃らしい。
結局それが隙を作り、まだ若いのだからと、見識云々と別の縁談が舞い込むようになってしまった。
今尚名家と呼ばれる四ノ宮家と、縁付きたいと願う家はそれなりにあると言う事だ。付き合いのある家だから、顔を合わせるだけならば、断れない。