京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
それから十五年経ったある日、四ノ宮家が朔埜を迎えに来た。母は再婚していたし、朔埜は家を出てほぼ自活していたから、最初は四ノ宮と言われてもピンと来なかった。勿論父親という言葉に浮かんだ感情も忌まわしいものでしかない。
その頃の朔埜は、所謂不良だった。
染髪に着崩した制服。
自分の存在意義さえ不明瞭になり、真面目にやってるのも馬鹿らしくて、不貞腐れていた。だから両親も朔埜を遠ざけたのだろうけれど。
それなのに目の前には祖父を名乗る人がいる。
血縁者ではあるが、見た事も聞いた事もない人。それなのに──
『やあ、初めまして』
朔埜は何故か、この老人にどう声を荒げていいのか分からなかった。ただの年寄りとして片付けるには、曲者感が否めないけれど……