京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 そうして朔埜は四ノ宮に行く事を選んだ。
 理由は祖父に嫌悪を覚えなかった事が一つ。
 もう一つは、高校の入学金を支払うと言ってくれたからだ。

 年々少なくなる仕送りでは生活するには足りず、朔埜は年齢を誤魔化してアルバイトをしながら学校に通っていた。
 だから大卒と中卒の仕事の違いも、給与への影響も知ってた。今後を考えるなら高卒以上の学歴がどうしても欲しかったのだ。

 母には引っ越す事だけ葉書で送ったが、どう思ったのかは知らない。何の連絡も返って来なかったから。
 ……きっと四ノ宮に行く事を決めた朔埜を怒っているのだろう。母にとっては自分を受け入れ無かった家。
 けれど、母が新しい家庭を築き、そこに入れて貰えない朔埜は、自分でどうにかしないといけない。

 与えられるチャンスを選り好みしている余裕は朔埜には無い。それだけだと四ノ宮家へ向かうトラックに乗り込み、見送りの無い後ろを振り返った。
< 47 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop