京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
結局朔埜は大学まで進むように祖父に命じられた。
四ノ宮の旅館業を学びながら、自分の今後を模索する。
そうして過ごしている間に、祖父は朔埜を後継に指名してしまったので驚いた。朔埜の父も結婚しており、息子が他にいたからだ。
一族からの反発があるのでは無いかと懸念したが、誰も当主の決定に否やとは言わなかった。
そういう家系なのだろうか……そもそも何故父は祖父の後を継がないんだろう。
その疑問は直ぐに解決する事になる。
父は東京にいた。
今や手広くやってる四ノ宮の経営母体は東京にあり、父はそちらを纏める経営のトップとなっていた。
老舗旅館の経営とは規模も動く金銭も違う。四ノ宮家の本質は旅館業とは言え、今やそちらの方が四ノ宮を支える母体と言っても過言ではなかろう。
けれど四ノ宮の「当主」は祖父である。
その辺の違いは朔埜には分からない。けれど、
(多分、親父は事業を「息子」に継がせたいんやろな)
そう思った。