京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
(わ……)
何というか、改めて見ると……怖い……
髪はほぼ金髪で、目つきが鋭い。
顔立ちは整っているのだが、不機嫌さを隠しもせずに圧が凄くて、史織は思わず閉口してしまう。
加えて、意識はしていなかったが……和装だ。
その印象のちぐはぐさに、急にどう反応していいか分からなくなり、史織は握りしめていた裾を急いで離した。それと同時に飽きれた声が上から降ってくる。
「あのなあ、君バカやの? こんな道中で立ちんぼさんしてたら、そりゃあ誤解されてもしゃあないわ。何してんの、迷子か? お父さんかお母さんは?」
「あ、あの……」
「それともまさかナンパ待ちでもしてたんやったら、ごめんて話やけど?」
……勢いが凄くて言葉が継げない。
口を開けたまま固まっていると、男性は胡乱げな顔で史織をじろじろと見た後、懐手をして溜息を吐いた。
「俺、君みたいにいい歳してすぐ泣くような女は嫌いやねん。どうせ黙って泣いてれば周りが何とかしてくれると思ってるんやろ」
ずばりと言われて思わず身動ぐ。
確かにこの性格で、誰かを助けるよりは、助けて貰う方が多いけれど。別に待ってる訳でない。……普段は。
「べ、別にそんな事は……」
「嘘やね、さっきも何も言わんとべそかいてたやん」
「それは……」
言わなかったんじゃなくて、言えなかったのだ。単純に言葉の問題だけれど……思い切って逃げるには、靴がこんな状態だったし……
視線を落とせば形だけはまともなスニーカーが目に留まる。
史織にしてみたら、にっちもさっちもいかない状況ではあるのだけれど。目の前の男の人には甘えが透けて見えたのだろう。
「迷惑を掛けて、ごめんなさい……」
「ふん」