京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「あー、くそ」
結局。
いい加減、どっちか決めろ──
そう言われて座敷を放り出され。朔埜はわしわしと頭を掻いた。
自分の事で手一杯で過ごしてきたものの、朔埜にだって忘れられない女性くらいいる。
当主を言い渡されて三年。
最近になってやっと四ノ宮の当主になる自覚が芽生えてきたというのに。それでなくとも結婚なんてまだ先でいいと思っていたから、自分の事を後回しにしていたツケがこんなところで出てしまった。
朔埜は音を立てて廊下を歩き、頭に浮かぶ用事のあれこれを追い出した。
(取り敢えず先に、これを片さな)
すぱんと音を立てて襖を開けた先。
いつものように書き物でもしているだろう、仲居頭の部屋に足を踏み入れた。