京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 見ると朔埜は目を見開いてこちらを凝視していた。
(何か、ついてる……?)

 髪の毛に手をやり払う仕草をしてから、改めて朔埜に目を向けた。
(それにしても)
 こうして間近で見ると、整った顔をしている人だ。写真よりずっと格好いい。

 多少威圧感はあるが、それも気難しそうな表情が緩めば、ずっと印象が変わりそうだ。
 背も高くスタイルも良いし、仕立ての良い着物を違和感なく着こなしており、品位と権威を思わせる。

 麻弥子がお見合いに応じたのも頷ける。
 なんて史織が見惚れているのと同じ間、朔埜も史織を観察するように目を細めていた。
「……」
 
(何だろう……?)
 見過ぎておいて何だが、朔埜の視線に段々と居た堪れなくなってくる。沈黙に耐えきれず、声を出そうと口を開いた瞬間、低い声が落ちてきた。

「今なんて言った?」
「──え?」
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