京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
暮なずむ空に郷愁と、そんな奇跡起こるわけないという自嘲めいた笑みが零れた。
(馬鹿馬鹿しい。一方的で、気持ちの悪い思いや)
勝手に期待して、失望する。
母親みたいに。
ふと母の顔が頭を過ぎった。
あの人が朔埜を見る目はいつも、「過ち」だった。
哀愁でも、悔恨でもない、ただの過失。
あの目で見られるのが嫌いだった。
自分の全てを否定されるような目。
それが幼い異父妹に向けられるものと違う事が、耐えがたかった。
母と同じになりたくない。
だから朔埜は誰かに依存したり期待したりしない。けれど祖父に引き取られ、多くの物を与えられるようになったから。
うっかり手を伸ばし、情けない顔をした女に心を開き掛け、放っておけないと思ってしまった。いつか自分にとって厭わしいものになるかもしれないのに……
けれど、と訴える自分もいる。
戸惑いながら握り返してくれた手や、はにかんだ表情。あの時間を彼女が何の名残りも無く去った事に、朔埜は酷く苛立った。