京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
慌てて祖父が持つ写真に手を伸ばすも、ちょこざいなじじいにひょいと躱される。
「……俺を付けてたんか!」
じろっと睨むと、祖父はふふんと得意げに鼻を鳴らした。
「当たり前やろ、お前は四ノ宮の後継者や。じいが決めた。決めたからには安全確保が必要やろ」
「張込み調査の間違いやろ。なんや、ずっと俺を監視してたんか。血縁者なんて言葉で油断させておいて……」
「まあ、そう勘ぐるな。確かに素行調査はしとったよ。けどそれより前にじいは、ほら。なんて言った?」
気色ばんだ顔で両手を広げる祖父に胡乱な目を向ける。
「知らん」
「ちょっと、そこ大事やぞ? ほら、お前が後継やて、な? だから仕方ないやろ。なあ拗ねんなて」
別に拗ねてるつもりは無いけれど。
四ノ宮家が老舗旅館を経営する名家なのだとは、ここで暮らす数年で知った。だからこそ朔埜はここに馴染まないよう、心を塞いでこの家と距離を取ってきたのに。
後継者がどれ程のものか知らないけれど、それより誰かに見張らせないとならない程、自分は信用がならないのだろうか。