京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「そうなんですね」
 史織も結婚式き参加した事はあるが、その時は都心の一等地にある今風のチャペルだった。タイトな時間で式場を貸切り、退室すると次のカップルがドアの前で待機していて……とにかく慌ただしい上き人が多い印象の場所だ。
 そこはその真逆だ。

 ──雄大な景観。趣ある建物。
 こんな景色を眺めながら永遠を誓えたら、良い思い出に残るだろうなあと思う。
 
「西野さん、ぼけっとしてる時間ありませんよ。今日からお客様が増えますからね」
「あ、はい」

 紅葉の時期は一般客も訪れる繁忙期だ。
 宿泊とイベントの手配で、旅館内はてんやわんやしていた。
 正直言って史織が見習いを許されたのは、猫の手も借りたい程忙しかったかはではないかと、今なら思う。
 それにしても本来の目的である、朔埜の調査だが……残念ながら今はそんな隙は無い。
 まあ、朔埜もパーティーの準備で忙しそうなので、恋人とゆっくりデートなんて時間は無さそうだけど。
(結局、恋人いるのかな? どうなんだろ……)
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