京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「あの──」
「好き、やったろ……?」
「……はい?」
 そろっと顔を上げれば相変わらずの不機嫌顔である。
 怒られているのだから当然かもしれないが、なんだか史織が思っているのとは別の叱責を受けている気がするのは気のせいか……
 
 じっと見つめる朔埜に対し、どう答えるべきか一瞬悩む。けれど嘘は一つで手一杯なのだ。これ以上風呂敷を広げて、収拾がつかなくなっても困ってしまうし……
「はい……」

 仕方がないので正直に答えれば、何故か朔埜が傷付いたような顔をした。
「でも、もう過去の事ですし、そもそも藤本君は私の気持ちを知りません。だから私たちはただの同級生なんです」
「……でも、あいつは……いや、いい」
 そう言って朔埜は不満そうに顔を背けた。
 ……どうやら、まだ疑われているらしい。

 これ以上目をつけられるのは御免被りたい。もしそうするなら、好意的に印象付けたい。だから、と史織は一つ覚悟を決めた。
「あの、私には、他に好きな人がいるので!」
「………………は?」
 他に相手がいると言えば誤解は解消される筈だ。
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