京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
長々と話しておきながら、到底弁明とは思えない事しか言っていない……藤本との誤解を解いて、真面目に働いていたと主張するだけの筈が……
居た堪れずに逸らしていた視線を、そろりと持ち上げれば、朔埜は目を見開いて固まっていた。
(──ま、まあそうよね。こんな話を聞かされるとは思わなかったでしょう……)
「あの……」
おずおずと声を掛ければ、朔埜がびくりと肩を震わせた。
行き場の無い手と共に視線も泳ぐ。
「すみません、こんな話を聞かせてしまって……」
うん、どう考えても余計な事だった。
まあ、一度しか会ってない人だとか、どうみても不良少年の気まぐれだっただろう事までは言わない予定なので良しとしよう。
「か、まへ……ん」
けれどぎくしゃくと動く朔埜からは、先程まで感じていた険が消えていた。話しすぎたかと思ったものの、朔埜の態度が軟化したのだ。ひとまず良かったと胸を撫で下ろす。