京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
「いつや……」
「はい?」
ぽつりと呟く朔埜に目を向ける。
「そいつに会ったのは、いつの事や」
「えっ」
まさかそんなところに食いつくとは思わなかった。
「四年前に……京都で……」
思い出せば口元が緩んでしまう。
……嫌いと言われて好きになるなんて変わっていると自分でも思う。でもそうでなくては自己研磨の意味を見出せなかった。見返したいと言うよりは、認めて欲しいと言う願望の方が強かったとも、ある時気付いた。
……男性の趣味が悪いと言われれば若干否定は出来ないけれど。史織には、あんなに印象的で衝撃的な「出会い」は無かったのだ。
だからその言葉を引き摺ったし、今までの視野に、視点まで変えてしまった。これを恋と呼んでも間違いでは無いと思う。
史織が自分に自信を持てるようになったら、もう一度会いたい人。だから恋──
はた、と喋り過ぎただろうかと改めて顔を上げれば、朔埜は強ばった顔を赤くして、口元を引き結んでいた。
……やはり余計な事を言い過ぎてしまったようだ。
けれど今まで抱えていた想いを口にして、言葉にできて、史織の方は少しばかり達成感を感じられた。だからまあ、良い機会を得られたと、プラスに考える事にした。少し恥ずかしいが、京都は直に離れるのだ。