京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「すみません、話し過ぎました……」
 ぺこりと頭を下げれば、朔埜がびくりと反応した。
「あ、いや……別に……」
 そわそわと視線を動かす朔埜は耳まで真っ赤だ。……何だか申し訳ない。

「その……恋が実ると、ええな」
 その言葉に思わず苦笑する。
「いえ、流石にそれは。どこの誰かも分からない方なので」
「……………………あん?」
 恋だと自覚したものの、流石に誰だか分からない相手に対して、いつまでも引き摺っていい想いだとは考えていない。
「今はその人の事が忘れられませんが、いずれ良い出会いがあれば、いい思い出になると思っています」
 
「……………………へえ」
 朔埜の赤かった顔から、すぅっと、音が聞こえる勢いで熱が引いた。恐らく誤解が解けたのだと思う。
 良かったと胸を一撫でし……首を傾げた。
 朔埜がじっと史織を見つめている。
 史織といる時はいつも不機嫌そうな顔をしているのに? 
 史織はこほりと空咳を打ち、仕切り直した。
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