スノー&ドロップス
「本当は知ってるんだろう? 今日、僕が部屋で何してたか」

 だから、もうこれ以上自由にさせてあげない。

「……分からない」

「少し前から、言おうと思ってた。好きな子が出来たんだ」

「それって、今日来てた……人?」

「違うよ」

 戸惑っている。微かに呼吸が荒くなって、雨の日に見せたキスと今日のことで頭の中は埋め尽くされているだろう。

「じゃあ、鶯くんは……好きじゃない子と」

「好きじゃない子とキスするのかって聞きたいの?」

 柔らかな頬に優しく手を添える。僕が映り込む瞳は、鼓動を跳ね上がらせるように大きくなった。
 ゆっくり顔を近付けると、火照った顔を背けて唇を震わす。

「ごめん、ちょっと驚いて……」

 乱れる心臓音が、僕の胸に響いている。
 鼻筋の通った横顔は少し強張っていて、かなり動揺している様子。正常な判断が出来ないところで、追い詰める。

「僕のこと好きだって、言ったよね。兄だからじゃないって」

「それは……」

 最初は、心の隙間を埋める代わりだった。母や凛名がいない寂しさからの依存だったのかもしれない。
 彼女に対しての感情は、洗脳して支配することによる安心感だった。
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