スノー&ドロップス
 謹慎生活が終わり、一週間ぶりに手錠が外された。自由になった手首を見つめながら、飼い犬たちはこんな気持ちなのかと複雑な感情が湧き上がる。

 両親を見送って、玄関の施錠(せじょう)をしたら、鶯くんの唇が降ってくる。壁に追い込まれた体は身動きが取れなくて、広い背中にしがみつくしかできない。

 ゆっくり離れる顔が、ぼんやりとしている。

 昨夜、微睡(まどろみ)の中で目を覚ますと、真っ暗の部屋に鶯くんがいた。ベッドの傍へ寄りかかるように寝ていて、恐れより心苦しさの方が勝った。

 泣いていたから。閉じたまぶたから、見たことのない雨が流れていた。


「茉礼、僕だけを見て」

 その瞳の奥はとても寂しげで、孤独の色をしている。星のない夜空を彷徨いながら、かすかな光を探しているみたいに。
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