スノー&ドロップス
「青砥さん」
御神木の向こうから、白髪をひとつに結った人が歩いてきた。
「藤春くん」
本当に会えた。
グレーの浴衣が、よりまぶしさを演出している。手を引かれ、私たちはさらに奥へと進んでいく。まるで、人の影に隠れるように。
木を通り抜け、たどり着いた神社の裏側はほとんど人がいない。ここでは花火が見えないから、訪れる人は自然と避けていくのだ。
繋いでいた手を、そっと離す。夏の空気と似合わない冷んやりした感触は、どうしてもさっきまでと比べてしまう。
「浴衣だとは思わなかった。その柄、変わってるね」
「お母さんのお下がりなんです。ちょっと、古臭いでしょ」
あまりマジマジと見られると、慣れていないから気恥ずかしい。後れ髪を耳にかけながら、目線が下がっていく。
「落ち着いてて大人っぽい。青砥さんによく似合ってる。髪もいつもと違うね。すごく、可愛いよ」
屋台のリンゴ飴のように頬が染まる。薄暗くてよかったと思いつつ、巾着袋から小さな布袋を取り出した。
「そうだ、……これ」
紺色の布袋を差し出すと、藤春くんが不思議そうに受け取る。
「なに?」
「魔除けの御守りです。パワーストーンというもので、作ってみました」
「え、青砥さんの手作り?」
大げさなくらいの驚きように、少し身長が縮まった。
ゼロから何かをしたことも、誰かのために物を作ったことも初めてで、不恰好なのは否めない。
御神木の向こうから、白髪をひとつに結った人が歩いてきた。
「藤春くん」
本当に会えた。
グレーの浴衣が、よりまぶしさを演出している。手を引かれ、私たちはさらに奥へと進んでいく。まるで、人の影に隠れるように。
木を通り抜け、たどり着いた神社の裏側はほとんど人がいない。ここでは花火が見えないから、訪れる人は自然と避けていくのだ。
繋いでいた手を、そっと離す。夏の空気と似合わない冷んやりした感触は、どうしてもさっきまでと比べてしまう。
「浴衣だとは思わなかった。その柄、変わってるね」
「お母さんのお下がりなんです。ちょっと、古臭いでしょ」
あまりマジマジと見られると、慣れていないから気恥ずかしい。後れ髪を耳にかけながら、目線が下がっていく。
「落ち着いてて大人っぽい。青砥さんによく似合ってる。髪もいつもと違うね。すごく、可愛いよ」
屋台のリンゴ飴のように頬が染まる。薄暗くてよかったと思いつつ、巾着袋から小さな布袋を取り出した。
「そうだ、……これ」
紺色の布袋を差し出すと、藤春くんが不思議そうに受け取る。
「なに?」
「魔除けの御守りです。パワーストーンというもので、作ってみました」
「え、青砥さんの手作り?」
大げさなくらいの驚きように、少し身長が縮まった。
ゼロから何かをしたことも、誰かのために物を作ったことも初めてで、不恰好なのは否めない。