スノー&ドロップス
「寄ってたかってなにしてんの? その子、離せよ」

 とりあえず話しかけてみたけど、聞く耳は持っていないらしい。ニタニタしながら別の男が近づいてきて、俺の髪をクイっと引っ張る。

「君さぁ〜、男の子? キレイな顔傷つけられたくなければ」

 衣服を掴んだと同時に、その男を地面に叩きつけた。しまった……つい反射的に投げてしまった。

「いっ、痛ってえーー!」

 青砥さんを捕らえている男が、一歩後ろへ下がる。さっきまでの表情と打って変わって、焦っているように感じた。

「別にかまわないけど。青砥さん離してくれるなら」

「お、お前調子に乗ってんなよ⁉︎」

 後ろにいた男の手に、鉄の棒らしきものが見えた。これは少しマズイかもしれない。いくらなんでも人数が多すぎる。
 上手くすり抜けて、青砥さんだけでも助けないと。そう思った時。

「茉礼に触るな」

 背後から聞き覚えのある声がした。長身の高校生が、鉄パイプ男を羽交締めにしている。驚いた男は、素早く手のひらを見せてパイプを離した。カランカランと、不快な音が響く。

「おい、なんか増えたぞ」

「なんなんだよコイツら」

 青砥鶯祐。普通ならば、彼女のように瞳孔が開き驚くところなのだろうが、俺は違う。なんとなく納得できてしまう自分がいる。

 獲物を狙う狂気的な眼。異常なまでの妹への嫉妬と執着。
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