スノー&ドロップス
ーーこれで、ほんとに終わっちゃうんだ。
心の声が時々聞こえてくる。青砥さんが、俺を嫌いで向こうを選んだのではないことくらい分かっている。
でも、どうすることもできない。彼女が決めた道だから、あとは見守るだけ。
「どのあたりで、切ったらいい?」
「うーんと、このへんかな」
ハサミを持つ手に指を重ねて、位置を決める。小刻みに揺れる手が落ち着くまで、じっと待った。
「思いきりいっていいよ。最後の手直しは、姉がするらしいから」
「そっか! よかった」
その言葉を聞いて、少し肩の荷が下りたらしい。ここへ来て、初めて笑った顔が見れた。
サクリ、サクリと少しずつ切られる音がする。髪の一本ずつに神経が通っているのか、やんわり痛みが伝わってきた。ヒリヒリとして、ズキンとトドメを刺す。
最後のひと切りが終わり、俺の髪は肩につかないほどの長さになった。サラリと落ちる髪は、青砥さんの手の中に全てとどまっている。
「捨てたらいけない気がしたので」
そう紐で束ねた髪を、青砥さんがトレーへ置く。なんだろう。心の中がじんわりと暖かくなって、優しい気持ちになる。
ありがとうと口にしながら、違和感を覚えた。鏡に映る自分の目が、だんだんと色褪せていく。
「藤春くん、目が……」