スノー&ドロップス
「ならいいけど。あの子、あまり本音を言わないから、時々心配になるのよね。なにか思い詰めてないかって」

 お母さんには、お見通しなのだろうか。私たちの異常な関係を知っているのか。こうした普通の会話すら、詮索して怯えてしまう。

「茉礼もよ? なにかあったら、お母さんに話してね」

「……うん」

 まともに顔が見られなくて、私はリビングを出た。ただ、階段を上がるだけで息切れしている。

 鶯くんの部屋をノックして、声だけかけた。

「ご、ご飯……だって」

 あまりの力無さに驚いたのか、すぐにドアが開いた。心配そうな目をした鶯くんが、「茉礼?」と首を傾げる。

「……もう、わかんなくて。どうしたらいいのか」

 手を引かれ、くるんとドアの向こう側へ入り込む。電気の消えた部屋からは、懐かしい匂いがした。

 パタンと閉まるドアの前で、大きな腕に抱き締められる。息苦しさに襲われながら、動けない。それほど強く縛られているわけではないのに、手も足も動かない。

「悲しいの?」

 頭の上から、穏やかな声が落ちてくる。

「あの子と話せなくて、泣いてるの?」
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