スノー&ドロップス
 藤春くんと話さなくなって、数ヶ月が過ぎた。新年を迎えてから、私は毎週神社へ足を運んでいる。

 ある土曜日の朝。鶯くんの塾を見送って、私はバスに乗った。しばらくして降りたところに神社がある。最近知ったのは、ここに祀られているのが雪の神とされている(おかみ)という神様らしい。

 石垣の階段を登り、鳥居をくぐって少し進むと本殿が見えてくる。手を合わせて、いつも通り願いを唱えた。

 ーー藤春くんの呪いが消えて、一七才を迎えられますように。鶯くんが救われますように。


 参拝をして帰ろうとしたとき、視界に黒いズボンが飛び込んできた。

「あっ」

 顔を上げた拍子に小さな声が漏れる。お互いに、数秒の時間が止まった。こんなところで藤春くんと会うなんて、どんな神様のいたずらだろう。

 気まずい空気が流れて、私は足早に去ろうとした。気が動転したのか、階段を踏み外し勢いよく転んでしまった。
 恥ずかしさに襲われながら立ちあがろうとするけど、上手くできない。足を捻ったらしい。

「痛っ」

 ズキンとする足首を引きずったとき。

「待って、無理に動かさない方がいいよ」

 駆け寄ってきた藤春くんに、体を支えられた。ふんわりした懐かしい香りに、胸がギュッと締め付けられる。
 腕を抱えて石段まで来ると、私をそっと座らせてくれた。
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