スノー&ドロップス
「キャッ!」

 足がもつれて、砂利道で前へと倒れる。タイツの下から血が滲んできた。それでもすぐに立ち上がり、長い階段を駆け上がる。

 鳥居をくぐり、何度も足を運んだ神社の前へたどり着いた。ここにいる確証はないけれど、心が導いてくれたの。

 どこにいるのーー?

 辺りを見渡して見ても、誰もいない。土曜日の昼前ならば、何人かの参拝客がいてもおかしくはないのに、人影ひとつ見当たらない。あまりにも不気味で、不自然だ。

 チラチラと雪が降り始めた。ひとつだけ、綿毛のようにふわりと空を飛ぶものがある。その雪を追って行くと、霧が立ち込めてきた。足を踏み入れると、周りを遮断するようなベールが降りたように見える。


「誰じゃ」

 本殿の前に、ずらりと並ぶ白い装束(しょうぞく)の人たち。その真ん中には、真っ白の肌と髪をした人が横たわっている。

 顔はよく見えないけど、すぐに藤春くんだとわかった。

 何かの儀式をしているのか、背の低いお婆さんがお祓い棒を持ってジロリと私を見ている。
 よく見たら、ここにいるのは全員女の人だ。お婆さん以外の顔は布で隠れているけど、風貌がそうだ。

 なんだか、怖い。一瞬、足がすくむけど、ここで負けてはいけないと自分を奮い立たせる。

「茉礼ちゃん?」
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