スノー&ドロップス
奥の方から、小柄な人が現れた。髪は下りているけど、声が月さんだ。
「私、藤春くんを助けたくて……どうしたら」
人をかき分け、月さんの前へ出たお婆さんが、私の前に立ちはだかる。
「なんや、ツキの知り合いか。だがな、ここは神聖な儀式の場。よそ者が入っていい場所ではない。早う帰りなされ」
お祓い棒をザッと振ると、辺りの霧が一部だけ薄くなった。出て行けと言われているのだろう。だけど、私は覚悟を決めてここにいるの。
「もうすぐ、雪は……結晶になる。最期を見届けてやってくれ」
頭を下げる月さんに、お婆さんは強い口調で捲し立てる。
「ダメじゃ。近づいてはならん。心を通わせる者の愛がなければ死は防げん。化け物に自ら心臓を捧げる者など、この世にはおらん。残念だがな」
藤春くんが眠る横の祭壇には、綺麗に束ねられた白い髪が祀られている。私が切ったものだ。
『わたしと、友達になってくれない?』
口を開きもしない私に、話しかけてくれて。
『俺は十七の誕生日が来るまでしか生きられない』
誰にも言えない秘密を教えてくれて。
『ずっと、声が聞きたかった』
気づけば、いつもそばにいて、笑ってくれた。
『俺、青砥さんのことが好きなんだ』
まっすぐな気持ちも、必死なところも、
『なんか……運命感じちゃうなーーって』
全部ひっくるめて、愛おしいと思えた。
『ありがとう。これで、友達は解消だね』
見えているものだけが真実とは限らないのに、私は塞ぎ込んで逃げていただけ。
『ずっと休んでるのって、俺のせい?』
最後に残された景色が、あんな冷やかな目だなんて……。なぜ、自分の気持ちを押し殺してまで、離れることを選んでしまったのだろう。
「私、藤春くんを助けたくて……どうしたら」
人をかき分け、月さんの前へ出たお婆さんが、私の前に立ちはだかる。
「なんや、ツキの知り合いか。だがな、ここは神聖な儀式の場。よそ者が入っていい場所ではない。早う帰りなされ」
お祓い棒をザッと振ると、辺りの霧が一部だけ薄くなった。出て行けと言われているのだろう。だけど、私は覚悟を決めてここにいるの。
「もうすぐ、雪は……結晶になる。最期を見届けてやってくれ」
頭を下げる月さんに、お婆さんは強い口調で捲し立てる。
「ダメじゃ。近づいてはならん。心を通わせる者の愛がなければ死は防げん。化け物に自ら心臓を捧げる者など、この世にはおらん。残念だがな」
藤春くんが眠る横の祭壇には、綺麗に束ねられた白い髪が祀られている。私が切ったものだ。
『わたしと、友達になってくれない?』
口を開きもしない私に、話しかけてくれて。
『俺は十七の誕生日が来るまでしか生きられない』
誰にも言えない秘密を教えてくれて。
『ずっと、声が聞きたかった』
気づけば、いつもそばにいて、笑ってくれた。
『俺、青砥さんのことが好きなんだ』
まっすぐな気持ちも、必死なところも、
『なんか……運命感じちゃうなーーって』
全部ひっくるめて、愛おしいと思えた。
『ありがとう。これで、友達は解消だね』
見えているものだけが真実とは限らないのに、私は塞ぎ込んで逃げていただけ。
『ずっと休んでるのって、俺のせい?』
最後に残された景色が、あんな冷やかな目だなんて……。なぜ、自分の気持ちを押し殺してまで、離れることを選んでしまったのだろう。