スノー&ドロップス
「……何人かいるけど、急にどうした? もしかして、友達欲しいの?」

「ち、違うの! そんなんじゃないんだけど、何となく……気になって」

 問い掛けた時、どんな表情をしていたのだろう。恐れるように唇を震わせて、茉礼は僕の目を見ない。

 人差し指一本で押したとしても、すぐに崩れてしまいそうだ。

 壊れ物を触れるように彼女の頭へ手を置く。そのまま髪を伝って、撫でる指を頬へと落とす。
 ほのかに熱を帯びた肌が、僕の指先に伝染していく。この頬に触れていいのは、僕だけだ。

「茉礼には僕がいるだろう?」

「私の味方は、鶯くんだけって、分かってるよ」

「余計なことは何も考えなくていいんだ。傍にいてくれたら、ずっと僕が守ってあげる。だから絶対裏切らないで」

「うん、ごめんね」


 久しぶりに見た映画は、吐き気がするような内容だった。耳がもげそうな甘ったるい台詞を、都合良く並べたままごとのような物語。

 惹かれ合う二人が障害を乗り越えて愛を確かめ合う。

 結局、どんな恋愛モノも同じだ。そうなるように作られている。
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