スノー&ドロップス
 まだ夢の中にでもいるのかと、目を見開いて藤春さんの顔を食い入るように見る。美しい目鼻立ちは薄れることはなく、徐々に鮮明になっていく。

 夢、であって欲しかった。

 床にしゃがみ込んだまま、彼女は通学鞄を探っている。

「青砥さん、昨日も休んでいたでしょ? 明後日提出のプリントがあったから、わたしが持って」

「家の誰かに、会いましたか⁉︎」

「お母さんなら、さっき出掛けたけど」

「お……あ、兄には?」

「会ってないよ。青砥さんって、お兄さんいるんだね。似てるの?」

 その時、玄関の開く鈍い音が聞こえた。これは状況的にとてもまずい非常事態。クラスメイト、ましてや仲良くないと断言した子を部屋に連れ込んでいると知られたら、私はどうなってしまうの?

 きっと、夢のように蔑んだ目で見られて見捨てられてしまう。

 ーー裏切り者だと。

「こ、ここに入って下さぃ!」

「……え?」
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