スノー&ドロップス
「……あの、早くどいて? さすがに、この体勢はヤバい」

 バッと体を離すけど、近すぎるのに変わりはない。
 少しばかり声が低くなっている。それに、さっき足に触れていたのは、間違いなく女子にはないものだった。

 花のようないい香りと、頭の中をぐるぐるとめぐる文字にめまいがしそう。

 藤春さんって、まさかーー。

「おっ、ぉと……」

 言いかけて、シーッと人差し指が唇にあてがわれた。

 さらに接近した顔に後退するけど、背はドアに行くてを阻まれる。

「俺が男だってこと、みんなに言っちゃダメだよ? これは二人だけの秘密ね」

「なん……で」

「呪いだから」

「……のろ……ぃ?」

 いつもと同じような笑みを浮かべて、藤春さんは頷いた。

「女の格好してるのも、みんなそのせい。俺は十七の誕生日が来るまでしか生きられない」

「ど……して?」

「へぇ、気にしてくれるんだ?」

 その時、隣からドアを開ける音が響いた。鶯くんが部屋から出て、こっちへ歩いてくる。
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