スノー&ドロップス
「最近ずっと元気ないけど、学校で何かあった?」
穏やかな声が胸の奥に浸透する。泣いている子どもをあやすみたいに、私を包み込んでくれる。
ゆっくりと顔を上げると、兎のように赤くなっている目をのぞき込まれた。
「泣いてたのか」
「……学校、行きたくない」
鼻をすする音が静かな部屋に響く。ぐちゃぐちゃになった目を拭う指が弱音を吐いている。
鶯くんがそばにいてくれないと、壊れてしまう。
包帯がしてあった手首。今はもう取れて何もない。歯形はいつの間にか消えていて、あの日の鶯くんも泡沫の夢のように薄れていた。
目の前にいるのは優しい鶯くんで、辛い高校生活も日を追えばこんな風に色褪せて行くのかな。
「独りぼっちでも平気だったの。自分を誤魔化していれば良かったけど、今は辛い。隠されたり、破られたり、全部が苦しい。あの時より、ずっと」
小学生の時は、いつも鶯くんがいてくれた。
中学に入学してからも、一人ぼっちじゃなかった。だから友達なんていなくても良かった。
そっと背中が引き寄せられ、鶯くんの腕の中にすっぽりと入る。頭上から星空のような言葉が降り注ぎ、私は目の前にある大きな背中にしがみ付いた。
「一人でよく頑張ったね。僕がそばにいてあげられたら良かったのに」
穏やかな声が胸の奥に浸透する。泣いている子どもをあやすみたいに、私を包み込んでくれる。
ゆっくりと顔を上げると、兎のように赤くなっている目をのぞき込まれた。
「泣いてたのか」
「……学校、行きたくない」
鼻をすする音が静かな部屋に響く。ぐちゃぐちゃになった目を拭う指が弱音を吐いている。
鶯くんがそばにいてくれないと、壊れてしまう。
包帯がしてあった手首。今はもう取れて何もない。歯形はいつの間にか消えていて、あの日の鶯くんも泡沫の夢のように薄れていた。
目の前にいるのは優しい鶯くんで、辛い高校生活も日を追えばこんな風に色褪せて行くのかな。
「独りぼっちでも平気だったの。自分を誤魔化していれば良かったけど、今は辛い。隠されたり、破られたり、全部が苦しい。あの時より、ずっと」
小学生の時は、いつも鶯くんがいてくれた。
中学に入学してからも、一人ぼっちじゃなかった。だから友達なんていなくても良かった。
そっと背中が引き寄せられ、鶯くんの腕の中にすっぽりと入る。頭上から星空のような言葉が降り注ぎ、私は目の前にある大きな背中にしがみ付いた。
「一人でよく頑張ったね。僕がそばにいてあげられたら良かったのに」