スノー&ドロップス
 あたたかい胸は昔の鶯くんを思い出す。耳元でゆっくりと動く心臓音が、私の心を落ち着かせた。

「この前、家に来ていた子は助けてくれないのか」

「あの人は、知らないの。クラスメイトも、気付いてないと思う」

「その子と仲良くしてる、なんてことはないよな?」

「仲良くなんて、してないよ」

 呼吸が乱れる。刻む鼓動が速くなっている。動揺したら変に思われるのに。がっしりと私を抱き締める彼の腕は、少し離れようとしたくらいでは微動だにしない。

「だから言っただろ? 話したら好きだと勘違いされて、またいじめられるって」

 約束を交わした小学生の鶯くんと重なる。
 鶯くんの言う通りになった。藤春雪と関わらなければ、座敷童子のように認識されない空気でいられたのに。
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