お砂糖味のキス
私がこの人を1番に頼るのは,この人がこういう人だからだ。

私はいつからか奏詞以外の人に,恥ずかしくて素直に甘えられなくなって。

ツンとなるのはこの人にだけだけど,どれだけツンとしても,この人はちゃんとアドバイスして,励ましてくれた。

そして,この人に彼女が出来て,余計に接し方が分からなくなった。

……一度だけ会って,一緒に出掛けたことがある。

この人が,お互いを紹介したいとか言って,突然私の前に連れてきた。

仕方ないなって笑って



「隆治(りょうじ)」


って名前を呼ぶ,綺麗で可愛くて優しい人だった。

私も大好きになった。

多分,大好きになったその女の人が,この人の世界で1番の人になって。

同時に私が2番になって。

拗ねていたのだ。

絶対に教えてあげないけど,多分私はこの人を兄のように慕っていたから。

取られたような気持ちになった。

この人も私を妹だと本気で思ってる。

だから,この人が連れてきた彼女も,私を大事にしようと最初から好意的で,姉のようだった。

大事な人の大事な人を大事にしようとできる,この人が選んだのは本当にいい人だった。

だから余計に邪険に出来なくて,しまいには大好きになってしまって……

でもこうして笑ってくれるから,私はもういっかって笑う。

隆ちゃんもこの世で2番目に良い男だよ。

……言わないけどね。



「もぅっ何それ! じゃあまたね」



またね……別れの言葉にはいつだって私の本心が現れていた。

だからいつもあの人も笑って帰った。

背中が見えなくなって,



「~っ古都!!」



今度は君の声がした。
< 13 / 24 >

この作品をシェア

pagetop