今日も一緒に帰ろう
「せーんぱいっ!一緒に帰りましょ」

「待ってて。これ終わらせちゃうよ」


私がデータ入力しきれていない資料を指す。



「そんなこといってー。終わったらまた別の仕事始めるから、一生帰れないんですよ?」


うっ……。何も言い返せない。

外はもう真っ暗。時計を確認すると、午後十時になろうとしていた。


どうりで皆帰って、私たち二人だけなわけだ。


「……分かった。これだけやらせて、下さい……」


「絶対ですよ?俺が見張ってます」



鵜飼くんは私の隣に座ると、PCを立ち上げ始めた。


「えっ、なっ、何してるの?」


思わずそう問うと、不思議そうな顔を向けられる。


「それ、共有してください。僕も手伝います」

「えっ、あ……っ」


私は慌てて鵜飼くんのアカウントにデータのメールを送る。


「ありがとうございます。二人でやれば、早いですから」


にこっと笑って、長い前髪が揺れる。



「……ありがとう。鵜飼くん」

「……はいっ」


鵜飼くんの言うとおり二人でやったら作業がスムーズに進んで、あっという間に終わってしまった。
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