今日も一緒に帰ろう
ただ、その言動に涙が出てくるだけだった。


「は、泣いてんの?めんどくさ……」



私はぎゅっと両手を握って下を向き、涙を堪えた。


「ねえっ、早く続きしよ~?」


彼の腕を女性が揺さぶる。

「私の彼氏に触らないで」とか、そういうことを言う気力もない。



「分かったって。……麻奈さ、」


「……っ」


とてつもなく低い声が、頭の中に響いて痛い。

顔を上げたらその場に崩れてしまいそうで、下を向いたまま返答した。


「…………なに?」


「俺ら今大事なとこなの。分かるよね?だから今日はどっか別のとこ泊まっていって」


その後足音がして、ああ、戻ったんだなって分かった。


私は必要なものだけ持って、マンションを出た。
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