今日も一緒に帰ろう
「鵜飼くん……」


先輩の嗚咽が聞こえる。

泣くほど、困らせてしまった。



「ごめんなさい先輩、俺……」


離したくなんてなかったけど、嫌がることはしたくなくて、俺は先輩から手を離した。

ああ、もう全部終わった。

嫌われた、なんてものじゃない。

自分の気持ちを制御できなかった俺が悪い。


先輩はこっちに身体を向く。

きっともう、目も合わせてくれないだろう。


視線をどこにやっていいか分からず、玄関のドアに目線を定めることにした。

でもそれはあっさりとやめさせられる。


先輩が、俺の右手を掴んできたから。



「な、に、してるんですか……」


意識が右手に集中している。

ああ、もうやめて。これ以上、なにもしないで。


先輩は下を向いたまま、ぽたんと涙をこぼした。




「私も、好き……」
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