黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
だから大丈夫。
仏ほとけになれ、仏になれ。
私は八重樫君に貰ったお守りをぎゅっと握り締めながら心の中で唱えた。
八重樫君も男だ。
フットワークが軽く、可愛かったり、大人だったり、素直だったりする女性を好きになってきっとそのうち私なんか邪魔になる。
だからこれでいいんだ。
心が乱れないように、お守りを握り締めながら必死で堪える。
そして2週間目の金曜日、八重樫君は初めて外泊をした。しかも連絡一つよこさなかった。
こんな事は初めてだ。
いくら口を利かなくなっても帰りが遅くなる時には必ず何時ごろになるとメールを送ってくれていた。
でもそれは八重樫君が気を遣って送ってくれていただけでルールでもなんでもない。
八重樫君も大人だ。飲みすぎて連絡するのを忘れてそのまま夜を明かすことだってあるだろう。
はたまた、私のことなんて忘れていい感じになった人とたった一夜の関係を築くことだってあるだろう。
いや、思いが通じて付き合い始めたのかもしれない。
八重樫君がどんな女性と何をしていても私には何も言う権利はない。
だって、私達は付き合ってもいないし、想い合っているわけでもない。単に住処を共有しているだけの関係。
外からは鳥のさえずりが聞こえ、朝になったことを伝えている。
眠れなかった。大好きな漫画も同じページでずっと止まっている。何も頭に入ってこない。
最悪だ。
頭の中には八重樫君との日々や思い出、そして後悔がグルグルと回って私の心を引っ掻き回す。
頭の中の整理をするように私は家の掃除を始めた。
週に何度か家政婦が来て綺麗にしてくれるこの家には気合を入れて掃除する場所さえない。
でもいいんだ。
更にピカピカにしてやろう。
それ以外、私が無心になれることなんてない。
掃除を終えてスマホを触るとお守りが気になってきた。
「これ捨てたら罰が当たるよね」
独り言をつぶやきながら私はお守りを取り外し、アクセサリー箱に入れた。
アクセサリー箱には初めて八重樫君と映画を観た日に買ったピアスが刺さっていた。
そういえば、買ってから結局一度も着けてないな。
私は今付けているピアスを外し、ホースシューのピアスを下向きにつけた。
これで厄が落とせるとは思わない。それに私が恋愛できないのは厄のせいではない。
アクセサリー箱には本物の宝石が付いたジュエリーが沢山入っているのに、この中で今の私にとって一番価値があると思えるものは鎌倉の太陽に照らされキラキラと光ったあのお守りだった。
自然と涙が溢れてくる。
仕方ないよね。だって八重樫君だもん。八重樫君に惚れない女なんていないもんね。
私は吹っ切るようにベッドに伏せた。
「どうしたの双葉? 何かやつれてる」
「やつれてなんかいませんよ。1日や2日寝なくてもまだ何とかなる年齢です」
「ってことは、寝てないの?」
あれ? 私、八重樫君と話してる?
夢……か……。
仏ほとけになれ、仏になれ。
私は八重樫君に貰ったお守りをぎゅっと握り締めながら心の中で唱えた。
八重樫君も男だ。
フットワークが軽く、可愛かったり、大人だったり、素直だったりする女性を好きになってきっとそのうち私なんか邪魔になる。
だからこれでいいんだ。
心が乱れないように、お守りを握り締めながら必死で堪える。
そして2週間目の金曜日、八重樫君は初めて外泊をした。しかも連絡一つよこさなかった。
こんな事は初めてだ。
いくら口を利かなくなっても帰りが遅くなる時には必ず何時ごろになるとメールを送ってくれていた。
でもそれは八重樫君が気を遣って送ってくれていただけでルールでもなんでもない。
八重樫君も大人だ。飲みすぎて連絡するのを忘れてそのまま夜を明かすことだってあるだろう。
はたまた、私のことなんて忘れていい感じになった人とたった一夜の関係を築くことだってあるだろう。
いや、思いが通じて付き合い始めたのかもしれない。
八重樫君がどんな女性と何をしていても私には何も言う権利はない。
だって、私達は付き合ってもいないし、想い合っているわけでもない。単に住処を共有しているだけの関係。
外からは鳥のさえずりが聞こえ、朝になったことを伝えている。
眠れなかった。大好きな漫画も同じページでずっと止まっている。何も頭に入ってこない。
最悪だ。
頭の中には八重樫君との日々や思い出、そして後悔がグルグルと回って私の心を引っ掻き回す。
頭の中の整理をするように私は家の掃除を始めた。
週に何度か家政婦が来て綺麗にしてくれるこの家には気合を入れて掃除する場所さえない。
でもいいんだ。
更にピカピカにしてやろう。
それ以外、私が無心になれることなんてない。
掃除を終えてスマホを触るとお守りが気になってきた。
「これ捨てたら罰が当たるよね」
独り言をつぶやきながら私はお守りを取り外し、アクセサリー箱に入れた。
アクセサリー箱には初めて八重樫君と映画を観た日に買ったピアスが刺さっていた。
そういえば、買ってから結局一度も着けてないな。
私は今付けているピアスを外し、ホースシューのピアスを下向きにつけた。
これで厄が落とせるとは思わない。それに私が恋愛できないのは厄のせいではない。
アクセサリー箱には本物の宝石が付いたジュエリーが沢山入っているのに、この中で今の私にとって一番価値があると思えるものは鎌倉の太陽に照らされキラキラと光ったあのお守りだった。
自然と涙が溢れてくる。
仕方ないよね。だって八重樫君だもん。八重樫君に惚れない女なんていないもんね。
私は吹っ切るようにベッドに伏せた。
「どうしたの双葉? 何かやつれてる」
「やつれてなんかいませんよ。1日や2日寝なくてもまだ何とかなる年齢です」
「ってことは、寝てないの?」
あれ? 私、八重樫君と話してる?
夢……か……。