黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
歓迎会、残り30分。

生きた心地がしなかった。

何が起きるのか、私はどうなってしまうのかとハラハラしていたが、結局八重樫君の手は優しく膝に添えられていただけで何事もなく、歓迎会を終え、私の膝は八重樫君から解放された。

ぱらぱらとみんなが店を出て入り口付近で2次会の話をしている後ろを通り、こっそり帰ろうとしていると八重樫君が後ろから近づいてきて耳元で「ドキドキした?」と尋ねてきた。

八重樫君は私の顔がほんのり赤くなったのを確認すると満足そうにみんなの輪に入っていった。

からかわれてる。私、年下にからかわれている。

最悪の金曜日だ。そう言えば、今日は13日。

13日の金曜日は、私のもとに悪魔が舞い降りた最初の夜だった。


翌日はお昼過ぎまで布団の中でゴロゴロとしていた。

土曜は大抵こんなもんだ。

飲み会がなくても金曜の夜は漫画を読んだり映画を観たりと夜更かしをして自由に過ごす。

独身の特権。

たまに学生時代の友達と遊ぶこともあるがこの歳になると周りは結婚や出産を経て違う交友関係を築いていく。
会社で友達になった同期も郁美以外は会社を辞め、子育てに励んでいるか、海外を含む新天地で頑張っている。
何も変わらないのは私、ただ1人だけ。

だから今日も誰からの誘いもなく自由な一日である。
そんな日にやるべきことはただ一つ。

最大級にお洒落して、ショッピングを楽しむ!

今日もクローゼットの中から気分に合わせた洋服を選ぶ。昨日の邪気を追い払うような淡いパステルカラーの服でコーディネートし、化粧をして、ウェッジソールで身長を底上げする。

不思議と姿勢も整い、別人に生まれ変わったようなこの感覚は未だに私を高揚させる。
目的もなく気ままに街を歩いてお洒落なお店に堂々と入って行く。

お洒落をしている時としていない時では店員さんの対応が異なるように感じるのは私だけだろうか。特にブランドショップでは顕著で店員さんの笑顔が違うし、声のトーンも異なる。

色んなお店に入ったがこれと言ったものが見つからない。時間も時間だし、これで最後にしようとジュエリーショップを覗き込むと店員さんが笑顔で扉を開けてくれた。

足を踏み入れた私は、ショーケースに飾られた色とりどりの煌めく宝石に目を奪われていく。

リングにネックレス、様々なジュエリーが並ぶ中、私の目はあるアクセサリーに引き寄せられた。

隣に置いてある製品ポップの文字が目に入る。
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