黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
「そうなんだけど色々と、ほら、それにタイミングが……」
「やっぱり部長のこと気に入ってるんじゃないの?」
「それはないよ!」
「ふーん。じゃあ断りなよ」
「でも……」
「ほら断る気ないじゃん」
あの時の困ったような部長の笑顔に私でも役に立てるのならと一瞬思ってしまったことは八重樫君には言わない方がいいだろう。
「仕方ない。俺も行くか」
「え?」
人というのは何とも不思議な生き物だ。
翌日私は八重樫君の指示に従い不自然にならないように朝部長に声をかけた。
「あの、ブチョー、ムスメサントイク、スイゾクカン、オトモシマス」
覚えたセリフは棒読みになってしまった。
「え? 二条さん部長の娘さんと会うんですか? いいなぁ。俺も会ってみたいです。しかも水族館! 行きたいな」
八重樫君は客先訪問の準備で朝早く出社しており、部長と3人になったタイミングで私は部長に声をかけていた。
もちろん八重樫君は準備していたので本当は早く来る必要なんてなかったのだが、思い立ったが吉日の八重樫君はすぐに行動に移したのだ。
それにしても八重樫君の演技は上手だ。
「お、八重樫君も水族館好きか?」
「好きです」
「もしよかったら一緒にどうかな?」
「いいんですか? ありがとうございます!」
「私も助かるよ。大勢いた方が娘も喜ぶだろうし」
それから私を置き去りにして2人は待ち合わせ場所や時間などを話し合っていた。
八重樫君は策士だ。
土曜日、私達は待ち合わせした駅のロータリーで待っていた。
車が一台私達の目の前に止まり、その中から部長が降りてきて後部座席のドアを開けてくれた。
紳士!
車に乗ると助手席には可愛らしい女の子が座っていた。
「初めまして、二条双葉と申します」
「初めまして、八重樫蓮です。今日はよろしくね」
女の子は恥ずかしそうに「星羅」と名乗った。
車内にはアニメソングだろうか、可愛い歌が流れている。
かっこいいこの車とダンディな部長に似つかわしくないこの音楽。
「最近はこんな曲が流行ってるんですか? 可愛い歌ですね」と八重樫君が鋭くツッコミを入れた。
「あぁ、星羅が好きでね」
「パパも好きでしょ」
部長は娘のツッコミにタジタジだ。
楽しく会話をする八重樫君と部長と星羅ちゃん。
部長、むしろ私は邪魔だったのではないでしょうか?
私は3人の会話をただただ聞いていた。
水族館に着いた頃には、最初あんなに恥ずかしそうにしていた星羅ちゃんが八重樫君に心を許していた。
「これじゃあ父親の面目ないな」
車を降り、八重樫君の手を掴んで水族館の入り口に急ぐ星羅ちゃんを見て部長はそう言った。
「やっぱり部長のこと気に入ってるんじゃないの?」
「それはないよ!」
「ふーん。じゃあ断りなよ」
「でも……」
「ほら断る気ないじゃん」
あの時の困ったような部長の笑顔に私でも役に立てるのならと一瞬思ってしまったことは八重樫君には言わない方がいいだろう。
「仕方ない。俺も行くか」
「え?」
人というのは何とも不思議な生き物だ。
翌日私は八重樫君の指示に従い不自然にならないように朝部長に声をかけた。
「あの、ブチョー、ムスメサントイク、スイゾクカン、オトモシマス」
覚えたセリフは棒読みになってしまった。
「え? 二条さん部長の娘さんと会うんですか? いいなぁ。俺も会ってみたいです。しかも水族館! 行きたいな」
八重樫君は客先訪問の準備で朝早く出社しており、部長と3人になったタイミングで私は部長に声をかけていた。
もちろん八重樫君は準備していたので本当は早く来る必要なんてなかったのだが、思い立ったが吉日の八重樫君はすぐに行動に移したのだ。
それにしても八重樫君の演技は上手だ。
「お、八重樫君も水族館好きか?」
「好きです」
「もしよかったら一緒にどうかな?」
「いいんですか? ありがとうございます!」
「私も助かるよ。大勢いた方が娘も喜ぶだろうし」
それから私を置き去りにして2人は待ち合わせ場所や時間などを話し合っていた。
八重樫君は策士だ。
土曜日、私達は待ち合わせした駅のロータリーで待っていた。
車が一台私達の目の前に止まり、その中から部長が降りてきて後部座席のドアを開けてくれた。
紳士!
車に乗ると助手席には可愛らしい女の子が座っていた。
「初めまして、二条双葉と申します」
「初めまして、八重樫蓮です。今日はよろしくね」
女の子は恥ずかしそうに「星羅」と名乗った。
車内にはアニメソングだろうか、可愛い歌が流れている。
かっこいいこの車とダンディな部長に似つかわしくないこの音楽。
「最近はこんな曲が流行ってるんですか? 可愛い歌ですね」と八重樫君が鋭くツッコミを入れた。
「あぁ、星羅が好きでね」
「パパも好きでしょ」
部長は娘のツッコミにタジタジだ。
楽しく会話をする八重樫君と部長と星羅ちゃん。
部長、むしろ私は邪魔だったのではないでしょうか?
私は3人の会話をただただ聞いていた。
水族館に着いた頃には、最初あんなに恥ずかしそうにしていた星羅ちゃんが八重樫君に心を許していた。
「これじゃあ父親の面目ないな」
車を降り、八重樫君の手を掴んで水族館の入り口に急ぐ星羅ちゃんを見て部長はそう言った。