黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
八重樫君は笑顔で私の頭を撫でて、星羅ちゃんの元に戻って行った。

「あれ、二条君は?」

部長が八重樫君に聞いている隙に私はこっそり物陰から姿を現し、みんなの背後に立った。

「あの、ここに」

「おっ! あはは、二条君には本当に驚かされるな」

今日は星羅ちゃんもいるからだろうか、部長の笑顔はいつもより気が抜けていて鬼なんて一ミリも感じさせない優しいパパの顔をしている。きっと会社の子が見たらイチコロだろう。

その後も回っていると星羅ちゃんはますます八重樫君に懐いてしまって、私と部長は二人のお付きのようになっていた。

「月一回は会ってるんだけど、こんなに嬉しそうな星羅は久しぶりだな。2人に来てもらえて良かった」

「でも、八重樫君だけで良さそうですね」

「いや、二条君がチケットの手配をしてくれたり、星羅の落とし物を回収してくれたり、星羅の見たいものの最短経路を教えてくれているから、こんなに星羅は楽しいことに集中できるんだと思う。ありがとう」

「いえ、私にはそれくらいしかできないので」

私が言い終わらないうちに、星羅ちゃんは私の所に来て、「双葉ちゃん、イルカみたい!」と叫んだ。

ふ、ふ、双葉ちゃん?

こんな天使な可愛い女の子に名前で呼ばれるなんて一気にテンションが上がる。

「えっと、イルカはあちらなんですがイルカショーがあるのでお昼ご飯を食べた後がベストだと思います」と私はガイドを見ながら天使に提案した。

「うん、お腹すいた! お昼食べよう。蓮は何食べたい? パパは何でもいいよね」

部長は意見すらさせてもらえないようだが、笑顔で「あぁ」と答えていた。

その光景を見ていると不思議と笑顔になった。

「双葉ちゃんが笑った! 双葉ちゃん、パパのこと好きなの?」

「え? ち、違いますよ。なんか微笑ましいなと思いまして」

「ほほえましいってなに?」

「星羅ちゃんと部長がとても素敵な関係だなって思ったんです」

「意味がわからない。レストランどこ?」

星羅ちゃんは興味を失ったようにレストランの場所を聞いてきた。

私は昨日八重樫君と調べていた海をイメージしたレストランを勧めてそこに行くことにした。

レストランの壁には海の中の魚たちが描かれていて、海の中にいるような空間になっていた。

「わーきれー!! 海みたい」

星羅ちゃんはこちらの予想以上に目をキラキラさせて喜んでくれた。
そして私の予想通り八重樫君も目を輝かせている。

先程までのお兄さんキャラは何処へやら。
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