黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
私は星羅ちゃんと八重樫君を笑顔で見つめ何事もなかったふりをした。

「次あれー!」

星羅ちゃんが指差した先はコーヒーカップだった。

八重樫君の提案で星羅ちゃんは部長と八重樫君は私と乗る事にした。
八重樫君は星羅ちゃんにそろそろ部長が可哀想だから一緒に乗ってあげたらとこっそりアドバイスをしたようだ。

「ようやく2人になれた」

「本当だね。今日は星羅ちゃんが蓮を離さないもんね」

「それもあるけど、何か企んでそうなんだよな。双葉と部長をくっつけようと」

「え?」

「浮気すんなよ」

「しませんよ」

疑い深い目をした八重樫君は、いきなりコーヒーカップを激しく回し始めた。

「やめてー!」

私は叫びながら八重樫君の手を掴み、回すのを阻止した。
八重樫君は今日1番の笑顔で笑っている。
この笑顔を引き出したのが私だと思うと嬉しさが込み上げてくる。

私達は手を繋いだ。距離からして部長達からは見えない。
私は幸せだ。
しかし部長から聞いた話が頭をよぎる。

最初年上の部長を選んだ元奥さんは結局同世代の男性と再婚した。

私にもいつかくるであろうその現実が不安として私の心を侵食していく。

「どうした双葉?」

「ううん。なんでもない」

少しでも長くこの幸せが続きますように。

八重樫君の手の温もりを感じつつ、音楽が鳴り終わるまでのひと時を八重樫君とコーヒーカップに振り回されながら大切に過ごした。

コーヒーカップを降りると星羅ちゃんはメリーゴーランドに向かった。

星羅ちゃんは八重樫君に抱えられて大きな馬に乗せてもらいお姫様気分に浸ってご満悦だ。

部長は私に手を差し出してきた。

「大丈夫です。1人で乗れるので」

「女の子がそう言うんじゃないよ。ほら」

部長は私の手を取ろうとしたので私は「本当に大丈夫です」と部長の手を避けて少し離れた馬の方に向かった。

部長はすまないと言いながら星羅ちゃんの隣の馬に乗った。

過剰反応だと思いつつも、私が八重樫君ならきっと嫌だ。
私は馬に跨ろうとしたが、思いの外高かった。
コーヒーカップの余韻でまだ三半規管が戻っていなかったのか、かけた足が思うようにかからずぐねっと曲がり、思いっきり尻餅をついた。

天罰だ。優しさをむげに断った罰だ。

痛いと言えない自分と恥ずかしさで動けずにいると一部終始を見ていた星羅ちゃんが「双葉ちゃん大丈夫?」と叫んで事細かに2人に説明してくれていた。

恥ずかしいので、あまり詳しく説明しないで頂きたい。

馬に乗っていなかった八重樫君が笑いながらも駆けつけてくれた。
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