黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
「あっちに座ろうか」

八重樫君は馬車のようなオブジェに私をエスコートしてくれて二人で並んで座った。

星羅ちゃんが抗議をしたが1人では降りられない星羅ちゃんはメリーゴーランドが動き出すと大人しく部長とメリーゴーランドを楽しみ始めた。

「偉いな双葉」

2人に見えないように八重樫君は私の頭を撫でてくれた。

「偉いって。流石に痛いからってこのくらいじゃ泣かないよ」

「そうじゃなくて、部長のエスコート、断っただろ?」

あぁ見られていたのか。取り越し苦労の可能性もあったが見てくれていたのならよかった。

「帰ったらご褒美な」

どんなご褒美をくれるのでしょうか。

それにしてもこの歳でメリーゴーランドに好きな人と乗れるなんて夢のようだ。これも星羅ちゃんのおかげだ。
ありがとう、星羅ちゃん。

メリーゴーランドが終わって立ち上がると足首に違和感を覚えた。

「どうした? まだ痛む?」

様々な衝撃で1番ダメージを受けている箇所に気がつかなかった。

この歳になると多少の痛みは我慢できる。

「うん、ちょっと足首が痛いかなってくらい」

「立てる?」

「うん」

馬から無事に降ろされた星羅ちゃんも駆け寄ってきた。

「双葉ちゃん大丈夫?」

「ありがとう。大丈夫だよ」

嘘です。本当は痛いんです。痛いですよ、八重樫君! 

なんてことは言えない。
だって、「最後は蓮と観覧車」と言っていた星羅ちゃんの楽しみを奪うわけにはいかない。

観覧車なら座っていればいいわけだし、あと少しだけ、我慢すればいいのだ。

観覧車は結局四人で乗った。
痛みは刻一刻一刻と増している。

みんなは楽しそうにしている。ここで私が空気を乱してはいけない。

頑張れ黒子、負けるな黒子! 

自分の中で黒子チアリーディングを結成し、自分を励まし続けた。
私は、冷や汗をかきながら周り終わるのを待った。

正直景色なんて見ていなかった。

最後、観覧車から出る時に私は部長、星羅ちゃん、八重樫君の順番で降ろす事に成功した。

最後に降りる八重樫君の腕を掴むと八重樫君は驚いて私を見た。

私は揺れ動く観覧車の上で自分を支えきれずに八重樫君に向かってダイブした。

結局のところ、私は多くの人に迷惑をかけてしまった。

私のせいで観覧車は一時停車し、怪我がないかなど確認してくれて、救護処置室に八重樫君に支えられながら向かった。

私がすぐに訴えていればこんなに酷くはならなかったはずだ。

救護処置をしてもらい、捻挫ではあったが、すぐに処置せずに歩いたりした結果、より痛みが増す事になってしまったようだ。

八重樫君には怪我がなく少し救われた。

お土産売り場で待っていた星羅ちゃんも部長も私を心配してくれた。
私は星羅ちゃんにびっくりさせたお詫びとして遊園地のマスコットキャラクターのぬいぐるみをプレゼントした。

星羅ちゃんはびっくりしてないよとあんなに目を丸くしていた子とは思えない笑顔でぬいぐるみを抱きしめていた。

こんなに小さいのに星羅ちゃんは私に気を遣ってくれている。本当にいい子だ。

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