8つの怖い話
「驚かせるつもりはなかったの、ごめんなさい」


その女性は申し訳無さそうに眉を下げて言う。


一瞬図書室の先生かと思ったけれど、見たことのない人だ。


年齢は20代前半くらいで、グレーのスーツを着て長い髪を後ろで1つにまとめている。


この学校の先生でもなさそうだし、誰だろう。


真紀は警戒して自分の体の前で本を抱きしめた。


そして女性を睨みつける。


「私はここの卒業生よ。今日は読まなくなった本を持ってきたの」


「卒業生?」


聞き返したときだった。


奥から図書室の先生が出てきて女性に話かけた。


「江藤さん、今日は寄贈してもらってありがとう。今月から図書館の本を購入する額が減ったから助かったわ」


「本ならいくらでもあるので、また持ってきますね」


2人は親しそうに話をすすめるので真紀は胸をなでおろした。
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