8つの怖い話
『ねぇ、すっごく気持ち良かったね!』


みんなと合流して興奮気味に話を交わす。


そして振り向いたときだった。


しおりがノーブレーキで坂を下ってきているのが見えた。


みんなと同じようにしたかったんだと、今ならわかる。


だけどあの時はどうして? という気持ちだった。


だってしおりはついこの前まで自転車に乗れなかった。


そんな子が、どうして同じようにノーブレーキでおりてくるの? と。


『しおり、大丈夫かな?』


直人が不安げな声を上げた瞬間だった。


しおりの自転車が急にバランスを崩した。


一度バランスを崩した自転車はなかなか元に戻らない。


『おい、ブレーキ使え!』


実が叫ぶ。


だけどその声はしおりにはとどかなかった。


しおりはフラつきながら車道へと出てしまったのだ。
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