8つの怖い話
「ただ使用禁止にするだけなら、こんな風にテープを貼る必要はないはずなんだ。それに撤去すればいいだけだろ? だけど今でもこうして、ここにあるんだ」


剛はジッとロッカーを見つめて言った。


その顔は少し青ざめている。


剛でも怖いのだとわかると、直人は少しだけ落ち着きを取り戻した。


「これが、本当にあの話のロッカーなの?」


「あぁ。そう言われてる。撤去されないのはなにか不吉なことが起こるからだって」


直人はまたゴクリとツバを飲み込んだ。


一歩ロッカーに近づいてみると、寒い風が直人の体を包み込んだ。


足を止めて周囲を確認してみるけれど、ロッカーコーナーには窓がない。


人の行き来もなく、風が動く気配はどこにもなかった。


じゃあ、今の風はどこから?


青ざめる直人はぎこちなく視線を赤いロッカーへと戻した。
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